日本の形「幽玄」

強く、美しく、
儚い。


「日本髪」と一般的に認識されているものの多くは、
江戸時代の頃の女性の髪型である。
木の実などを原料にして作られた鬢付け油を髪に付けて、
つげ櫛で髪を梳きながら艶を出し、形作るのが特徴だ。
その種類は300種類にも及ぶと言われている。
紙で作った細い紐で髪を結い上げていく「結髪」という技法は、今では古典的な技法となり、舞妓などの極めて一部の女性以外は地毛で日常的に結い上げている人は殆ど見られない。

「能」の世界では、あの世とこの世の狭間にある
不可思議で魅惑的な世界を「幽玄」と呼ぶ。
今回は、伝統的な日本髪と独創的なメイクアップで
その幻想的な「幽玄」の世界を表現を試みた。
舞台はパリ。100年前に廃線になった線路の上。
現代の若者によるグラフィティと、荒れた地に自生するライラック。
異国の建造物と作り出す妙。触れようにもその存在に届かない。
その届かない美しさは、心を奪い、また遠ざかる。
(文・鳥島悦子)

“Yugen” (2017)
  • Hair & kimono styling /
    Etsuko Torishima
  • Make / Kei Sato
  • Photo /
    Hirosui Sakai, Masaru Mizushima
インスタレーション「幽玄」Installation of “Yugen”
2016年11月2日、六日町の歴史ある旅館
『温泉御宿 龍言』で行った
インスタレーションの記録。
2017年には新潟、パリ、東京と三都市で行い、
全ての会場で大盛況を得た。
Movie / Hisao Moriyama Photo / Hirosui Sakai