日本固有の美的観念である「粋」は
江戸深川の芸者のことを語ったのが始まりと言われている。
現代において、この「粋」という言葉を使う機会は少ない。
江戸時代の「粋な身なりや振る舞い」は
着物と距離ができた現代人が取り入れ難いのかもしれない。
しかし、現代人でも、例えば夏の花火を観るときに
「浴衣をさらりと着こなしたい。」と思ったり、
着物を纏う所作の美しさに拘ったりするものだ。
「生き方」としての「粋」は現代でも応用可能だ。
また「粋」は、平凡や理不尽に出会った時でも、
その中に輝きを見出す「生き方の妙」のようにも感じる。
西洋化を急いだ故に置き去りになってしまったが、
しっかりと後世に伝えて行きたい日本の美しさの一つだ。
今回の作品では「覚悟」を持って生きる人を描いた。
覚悟を持って向かう人の横顔は凛々しく、美しく、
その姿は紛れもなく、「粋」だ。
(文・鳥島悦子)