日本人の美的観念について時代を遡ってみる。
もののあはれ、艶、幽玄、雅…。
千年も昔の言葉に思いを馳せてみると、
そこにはそれまで知らずに過ごしてきた「美」が
数多く存在していた。
そして、ある人は言う。
「過去置き去りにしたものの中に
大切なものがたくさんある。振り返って拾い、
未来へ繋がなければならない。」と。
今回モデルが着用している打掛は尾形光琳による
国宝『紅白梅図屏風』を本歌として作成した。
咲く時を心得て、時を待って一斉に咲き誇る
梅の花々と滔々と流れる時の川。
宇宙万物に宿る「命」とそこに存在する「時」。
そして「着る人のよろこび」が中心に置かれて完成する世界。
そこに現れるのは「雅」な世界か、「幽玄」な世界か。
着る人の心持ちによって、その情景は変わる。
(文・鳥島悦子)